第16回APEC非公式首脳会合における胡錦涛演説(全文)
2008/11/23

  11月22日、胡錦涛国家主席はリマで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)第16回非公式首脳会合で、「開放・協力を堅持し、互恵・ウィンウィンを追求しよう」と題する重要な演説を行った。演説全文次の通り。

開放・協力を堅持し、互恵・ウィンウィンを追求しよう

――第16回APEC非公式首脳会合での演説

(2008年11月22日、ペルー・リマ)

中華人民共和国主席胡錦涛

  尊敬するガルシア大統領、

  同僚の皆さん。

  再びここに集まり、共に関心をもつ国際、地域問題について意見を交換できることを大変喜んでいる。ガルシア大統領とペルー政府は会議のために周到な準備をしており、これに感謝したい。

  目下、経済のグローバル化が深まり、アジア太平洋地域、亜地域の協力が急速に進んでいる。この地域はいま世界の経済発展の重要な原動力になりつつある。これと同時に、世界とアジア太平洋地域は諸々の不安定、不確定要因も抱えている。それは主に、国際金融市場が激動し、全世界の実体経済に対する金融危機の影響が次第に現れ、世界の経済成長が鈍化し、食糧安全保障とエネルギー安全保障問題が際立つこと、そして世界貿易機関(WTO)のドーハ・ラウンド交渉が停滞し、保護貿易主義が台頭していることに現れている。このほか、環境汚染、大きな自然災害、大きな伝染病などの非伝統的安全保障問題も依然深刻に存在している。これらの問題は世界経済の健全(適正)で安定した発展にとって厳しい挑戦(試練)となっている。

  国と国の相互依存度が日増しに強まっている今日、いかなるメンバーもこの挑戦と無関係ではありえない。これらの問題の解決は、すべてのメンバーの共同の努力にかかっている。われわれは、新たな複雑な局面を前に、各国が開放・協力の理念を持って、挑戦をチャンスに変え、互恵・ウィンウィン(共に勝者となる意)の実現に努めるよう主張する。

  同僚の皆さん

  目下、国際的金融危機が急速に蔓延し、広範囲に波及していることは、世界の経済成長にとって最も厳しい挑戦である。金融リスクに効果的に対応し、国際的金融安定を守り、世界経済の発展を促すことは、各国・各地域が共に抱える重要で差し迫った任務であり、国際社会は自信を強め、協調を強め、協力を密にする必要がある。先週開かれた20カ国グループ(G20)首脳の金融市場・世界経済サミットはこの面で積極的な成果を収めた。ここで、中国の幾つかの主張を示したい。

  第一、悪化を続ける金融危機を抑えるため、各国は迅速に効果的措置を講じ、マクロ経済の政策協調を強め、情報交換をより完全にし、可能な限り互いに助け合うようにすべきだ。そしてあらゆる必要な財政・金融手段をとり、金融危機の拡散と蔓延を抑制し、全世界の金融市場を安定させ、経済成長を積極的に促し、今回の金融危機が実体経済に与える影響を出来るだけ減らし、全世界的景気後退(リセッション)が起きるのを回避すべきである。

  第二、国際社会は今回の金融危機の教訓を真剣に総括し、すべての利害関係者(ステークホルダー)の十分な協議を踏まえて、公平、公正、寛容な、整然たる国際金融新秩序の方向をおさえ、全面性、均衡性、漸進性、実効性の原則を堅持し、国際金融システムの必要な改革を行い、世界経済の健全な発展に有益な制度環境を整えるべきである。国際金融システムの改革では、金融監督・管理の普遍的法則と原則を反映するとともに、それぞれの経済体の発展段階と特徴を考慮し、各国の利益をバランスよく体現し、とりわけ新興市場国と発展途上国の利益を体現しなければならない。国際的金融監督・管理協力を強め、国際的監督・管理体制を整備しなければならない。国際金融機関の改革を促進し、その着実な職務遂行能力を高めなければならない。地域金融協力を奨励し、地域的資金救済制度の機能を十分発揮させなければならない。国際通貨体制の多元化を着実に進め、その安定を共同で支えなければならない。各種金融機関と仲介機関はリスク管理を強め、透明性を高め、強い決意で短期資金移動と金融革新(イノベーション)のリスクに対する監督管理と早期警戒を強めるべきである。

  第三、長期的視点で、持続不能な経済成長方式を確実に改め、それぞれの経済発展における深層部の問題を解決する必要がある。さらに今回の金融危機が発展途上国に与えた影響に十分関心を払い、関係諸国に必要な支援を与え、途上国が発展の勢いを維持するのを助けるべきである。

  金融危機に対応するため、中国は可能な範囲内で積極的な努力を払い、一連の大きな措置を講じた。国内金融システムの安定確保、金融市場と金融機関の流動性増加、諸外国とのマクロ経済政策の協調と協力の緊密化などだ。中国はさらに、国内外の経済情勢の変化に合わせて、マクロ経済政策を見直し、銀行預金準備率および預金・貸出金利の引き下げ、企業の税負担軽減などの措置を講じた。最近、中国政府はまた、内需拡大の一層強力な措置を打ち出した。すなわち今年第4四半期から2010年末までに、4兆元の投資を増やして、民生施設、インフラ、生態環境の整備と震災復興に充てると同時に、個人特に低所得者の所得を増やし、個人の消費能力を高める。これは中国経済の発展を強力に促進し、また世界の経済発展に役立つにちがいない。

  中国は引き続き国際社会と共に、国際金融市場の安定を守ることを願っている。またAPECの各メンバーと共に、金融分野の経験交流と能力整備を強めることを願っている。われわれは上海に設けられたアジア太平洋財政経済・開発センターが引き続き能力整備プラットホームの役割を果たし、各メンバーのためにより多くの研修と能力整備の活動を進めることを支持する。

  同僚の皆さん

  開放・協力、互恵・ウィンウィンは、当面の金融危機に対応する指導思想になるだけでなく、当面の全世界の経済・社会発展における際立った問題を解決する基本精神となるべきだ。今会議の議題に基づき、ここで当面の国際経済・社会発展における際立った問題についていくつかの主張を述べたい。

  第一、共通認識を凝集させ、多角的貿易体制の健全な発展を促進する。公平で、開かれた多角的貿易体制は地域と全世界の貿易の安定成長に有益で、世界経済の健全な発展の促進に有益で、各国の利益に合致する。われわれは多角的貿易体制に対する自信を固め、ドーハ・ラウンド交渉を強力に支持すべきである。保護貿易主義に断固反対し、ドーハ・ラウンド交渉の早期再開と全面的でバランスのとれた成果を目指すべきだ。われわれはまた、地域の現実を十分考慮し、各国の関心事に配慮したうえで、多角的貿易体制の重要な補完物として、地域経済統合をたえず推し進めることに賛成する。これにはアジア太平洋自由貿易圏などの構想を長期的目標として検討することが含まれる。

  第二、責任を担い、気候変動に共同で対処する。各国は「国連気候変動枠組み条約」とその「京都議定書」に基づき、共通だが差異ある責任の原則を順守し、「バリ・ロードマップ」交渉を積極的に実行に移すとともに、自らの状況にあわせ、有効な政策措置をとって気候変動を緩和すべきである。森林保護は気候変動対応協力の重要な内容だ。昨年、私はアジア太平洋の森林回復と持続可能な管理に関するネットワークづくりを提唱した。各国の共同の努力の下で、このネットワークはすでに北京で正式にスタートしている。中国政府は今後数年間にこのネットワークの運営のために一定の資金を提供する。各国の積極的な支持と参加を希望する。

  第三、交流・協力により、力を合わせて自然災害に立ち向かう。近年、自然災害が頻発し、アジア太平洋地域で大きな人的、物的被害を与えている。自然災害に立ち向かう過程で各メンバーは豊富な経験を積んだ。これらの経験は全人類の貴重な財産であり、われわれは相互交流と学習を強化すべきである。特に大きい自然災害への対応はしばしば一国の能力の範囲を超えており、国際社会の支援と援助が必要だ。アジア太平洋地域の関連交流・協力を強化するため、今年、中国は「APEC災害対応・協力基本原則」を提案した。APECの防災救災協力をたえず深めるため、各メンバーにも、災害復旧復興の長期協力プロジェクトについて考えるよう希望する。

  第四、規範化・指導によって、企業の社会的責任を強める。目下の金融危機がわれわれに与えた重要な啓示は、企業は経済収益を追求すると同時に、市場の中で慎重な、穏やかな、責任ある態度をとり、経済全体の安定を十分に考え、さまざまのリスクや危険に真剣に対応し、自らの不適切な経営が経済の発展と人民の生活に衝撃を与えるのを進んで防止すべきだということである。これはすべての企業、特に多国籍企業の社会に対する責任である。企業はグローバルな責任意識を持ち、自覚をもって社会的責任を経営戦略に盛り込み、所在国の法律と国際的な商習慣を順守し、経営方式をより完全にして、経済効果と社会効果の統一を追求すべきである。各国政府は指導と監督を強め、法律の制定と整備を通して、企業が進んで社会的責任を果たすための良好な環境を整えるべきである。

  第五、協調行動によって、世界の食糧安全保障とエネルギーの安全保障を確保する。食糧問題とエネルギー問題は各国の経済と民生にかかわるだけでなく、全世界の発展と安全にもかかわる。われわれは共同の発展の理念にのっとり、積極的効果的に政策を協調させ、多方面で措置を講じて、世界の食糧安保とエネルギー安保を共同で守るべきだ。食糧生産を重視し、投資を増やし、科学技術に依拠して、食糧供給を拡大すべきだ。食糧貿易の環境を改善し、公平で合理的な農産物貿易秩序をつくるべきだ。マクロの協調を強化し、市場の過度の投機を抑制し、食糧の市場価格を安定させるべきだ。力のある国は食糧危機に陥った国、特に発展途上国に支援を行うべきだ。中国政府は食糧不足の発展途上国に対する輸出と援助を増やすことをすでに約束している。

  われわれは互恵協力、多様な発展、協調的保障に基づく新しいエネルギー安全保障観を打ち立て、実行に移すべきだ。そしてエネルギー開発利用の互恵協力と政策協調を強め、エネルギー供給のグローバル化と多様化を実現し、先進的エネルギー技術の開発・普及体制づくりに努め、クリーン・エネルギーと再生可能エネルギーの使用拡大を提唱し、世界のエネルギー安全保障のためにたゆまぬ努力を払うべきである。中国政府はエネルギー安全保障問題を大いに重視し、安定した、経済的、クリーン、安全なエネルギー供給体制づくりに努めるとともに、資源節約型の、環境にやさしい社会の建設と持続可能な発展の実現のために力を尽くしている。

  同僚の皆さん

  APECは設立から20年近く、貿易と投資の自由化、円滑化および経済・技術協力をめぐって大量の活動を進め、地域経済統合とアジア太平洋の共同体づくりに積極的に貢献してきた。近年、APECは一連の大きな改革措置をとって、組織・調整能力の強化をはかり、協力の活力と効率を著しく高めた。中国は各メンバーと共に、APECを前進させることを願っている。この過程で、われわれは経済協力フォーラムの性格と非拘束的な協力方式を堅持すべきで、それは多様性と差異がめだつアジア太平洋地域の現状にかなうことである。引き続き経済技術協力と貿易・投資の自由化をバランスよく進めるべきで、特に経済技術協力面で資金投入を増やして、途上国メンバーの能力整備を強化し、格差を縮小しなければならない。そこで、中国としては2010年にAPEC人的資源開発閣僚会議を開催して、各国にこの分野の経験交流、協力推進の場を提供する用意がある。

  同僚の皆さん

  今年は中国にとって尋常でない年だった。中国人民は厳しい低温・雨雪・氷結、四川ブン川(ぶんせん)=ブンはさんずい+文=大地震などの災害の試練に耐え、北京オリンピックとパラリンピックを成功させた。この過程で、中国人民は本組織のメンバーを含む国際社会の大きな支援と心からの援助を受けた。ここで中国政府と人民を代表して、衷心より謝意を表したい。

  今年は中国の改革・開放30周年にあたる。30年の改革・開放を経て、中国は高度に集中した計画経済体制から活力に満ちた社会主義経済体制へ、閉鎖・半閉鎖から全方位開放への偉大な歴史的転換を成功裏に成し遂げた。経済が持続的急速に発展し、生活水準が大幅に向上し、社会の諸事業が顕著な進歩をとげた。同時にわれわれは、中国がなお世界最大の発展途上国であり、われわれが発展過程でぶつかる矛盾や問題は、その規模、複雑さ共にまれにみるものであることをはっきり認識している。中国は十数億の人口が恩恵を受けるより高いレベルの小康社会を全面的に完成させ、さらに近代化をほぼ実現し、すべての人民が共に豊かになるには、なお長い道のりを歩まなければならず、引き続き刻苦奮闘しなければならない。中国人民は改革・開放を揺るぎなく進め、引き続き経済・社会の全面的、調和のとれた、持続可能な発展のため、小康社会全面建設の壮大な目標実現のために奮闘する。

  経済のグローバル化が深まっている今日、中国の前途・運命はますます世界の前途・運命と密接に結びつくようになった。中国は発展のために平和・安定、調和・協力という国際環境を必要とし、またこのような環境をつくるために寄与したいと考えている。ここで中国が常に変わらず平和の道を歩み、常に変わらず互恵・ウィンウィンの開放戦略をとり、常に変わらず平和の発展、開放の発展、協力の発展を求め、平和が永続し共に繁栄する調和した世界建設のために力を捧げることを重ねて表明したい。