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『私から見る中国』作文コンクール入賞作品抜粋(その三)
2021/07/23

二等賞(2名)

スピード

山本 大輔

 2018年に上海行きの「復興号」に初めて乗った時、ふと車内の電光掲示板に目をやると「350km」という表示が流れ、ちょっとビックリしたのを覚えている。それは正直なところ「えっ、こんなスピードで走れるの?」という驚きだった。日本の鉄道技術は高く、速度や定時運行等のシステム面でまだまだ優れている…と私は勝手に思い込み、中国が日本よりも速いスピードで運行しているとは想像していなかったからだ。日本の新幹線にあたる中国の「高鉄」では、車内の電光掲示板に現在走行中の速度が表示される。通常時の営業速度が350キロであり、東海道新幹線の285キロや、東北新幹線が出す日本の区間最高速度の320キロよりも速い。直線的な線路区間が多いことも理由の一つだが、主には中国の技術力の進歩がこの高速運行を可能にしたのである。

 中国が日本のGDPを追い抜き、世界第2位になったのは2010年のことだ。そこから10年。中国のGDPは今や100兆元を突破した。日本の3倍以上である。遂に抜き去られたか…という記憶が消えぬうちに背中が見えなくなり、そして周回遅れとなって、気づけばこれだけの差が付いていた。それでも日本はGDP世界第3位である。この10年だって、それなりに伸びてきたつもりだ。そんなに悪くない。中国の成長スピードが速すぎるのだ。速すぎて、気がついたら月にも火星にも辿り着いているし、私が軽くボーっとしているうちに、きっと来年ぐらいに宇宙ステーションも出来てしまうのだろう。

 実際、中国の社会は変化のスピード感にあふれている。年単位、場合によっては月単位で社会生活の仕組みが変わったりするので、中国への赴任や滞在経験がある人と話をしても、認識がかみ合わないことがある。私が中国語を習った日本人の老師は滞在当時、タクシー運転手と会話することで中国語を上達させたという話を教えてくれたのだが、いざ中国に行ってみると配車アプリ(滴滴)のおかげで話す機会はそれほどなかった。(もちろんこれは私の中国語が上達しなかった原因の一つでもある…?)街中にあった多くのシェアバイクも、私が中国に赴任した直後はオレンジか黄色の2色だけだったが、日本に帰るころには薄緑と水色のものに置き換わっていた。今は電動アシスト付きバイクやスクーターもあるというから、社会の移り変わりが本当に速い。

 一般的に中国では、生まれた年代によってモノの見方や価値観が異なっていると言われる。それぞれ、1970年代、80年代、90年代生まれを指す「70後」「80後」「90後」での世代間のギャップは、日本の昭和から平成における相違よりも明確だ。10年刻みで世代が分けられるのも、経済が加速度的に成長し、育ってきた環境が大きく変化したからだろう。とはいえ、たとえ価値観が違っていたとしても彼らに共通していることは、「日進月歩で暮らしが豊かになっていく経験をしてきた」ことだ。このあたりが同年代の日本人とは異なっているところで、たまに羨ましいとも思う。

 そして最近のニュースを見ると、中国発の最先端のサービスやITテクノロジーに触れる機会が増えたように感じる。ロボットによる業務の自動化は広範囲に渡り、利便性や快適性が見るからに向上している。また、数百機のドローンによる空中アートや、裸眼で見られる3D広告等、日本に導入されれば注目を集めそうなものがたくさんある。世界情勢の影響をある程度受けながらも、こういった中国製のテクノロジーは今後さらに日本にも入ってくるものと思われる。

 この先、中国はどこへ向かい、どうなってゆくのだろうか。これは大げさでもなく、全世界の関心事である。まだまだ克服しなければいけない課題はあるだろうし、国際間の競争も続くとは思うけれども、中国はそのうちアメリカを抜いてGDP世界第1位になり、世界への影響力ももっと増えるだろう。影響力が高まりつつある存在に対する「恐れ」というものは誰にでもある。成長のスピード、ちょっとぐらい緩めてもらってもいいんですよ…と思いつつ、多分それは聞いてくれなさそうなので、日本もこれ以上離されないように頑張らないといけない。何事も慎重に検討ばかりしてないで、まずは走り出さないと。(走らなければスピードも出ないし…)

 それでも、お互いの国なり人となりを知り、相互の理解が深まれば、きっと物事はより良い方向に進むだろう。幸いにも、私は中国で良い人達との出会いに恵まれ、僅かばかりではあるが中国を知ることができた。特に若い世代は物事の考え方もしっかりとしていたし、優秀な人が多い。これは日本の若者も同様である。彼らが安心して世代のバトンを受け取れるよう、私は今後も中国の背中を追いかけ、正しい情報を彼らに伝えていきたい。

 
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